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(AMS鑑定通信 2025年冬号から)

 

1.税制改正予測
例年12月中旬頃、与党税制調査会が税制改正大綱を発表します。国税庁は11月13日、相続税財産評価に関する論点を公表しました。それによると、相続税に関しては、近年、節税と称して種々の相続税対策が喧伝されており、不動産や株式などの評価額を圧縮する租税回避等(スキーム)が広く利用されている状況、及び社会経済情勢の変化に伴い、そのスキームの態様が多様化していることを問題視しています。
具体的には令和4年4月19日最高裁判決事案(東京都杉並区及び神奈川県川崎市で収益物件を2棟取得し、相続税額を0円にしたケース、最高裁判決で鑑定評価額に基づく更正処分を行った国側の全面勝訴)、相続開始直前に一棟賃貸マンションの駆け込み取得を行った事案、不動産小口化商品の贈与により相続税対策を行った事案を紹介しています。
その要因としては、そもそも不動産市場における貸付⽤不動産の価額については、主に収益性によって価値判断が⾏われるため、⼀般的に貸家の稼働状況等が良好で、賃貸の割合が⾼くなると市場価格が⾼くなる⼀⽅で、評価通達における貸付⽤不動産の価額については、借家⼈の⽀配権による利⽤の制約等を考慮して評価するため、借家⼈がおり、賃貸の割合が⾼くなると通達評価額が低くなることを挙げています。
 国税庁のレジュメでは、次の弊害も指摘されています。スキーム事例では相続税対策を企図した駆け込み取得、物件の希少性等によって、不動産が⾼値で取引される傾向にあり、
こうした事例の中には、不動産会社や⾦融機関等から売買・借⼊などのあっせんを受け、貸付⽤不動産を購⼊後、貸室の稼働状況等が悪化し、借⼊⾦の返済等に窮する後継者がいることや、固定資産税等の納税が困難となるなど、相続税対策に関連した種々の問題が散⾒されるとしています。近日内に公表される税制改正大綱でどのような対策が示されるのか要注目です。

 

2.白馬村の原状
長野県白馬村に行く機会があり、最近の不動産状況を見て来ました。令和7年地価調査で、白馬村の地点が全国商業地上昇率第4位にランクインするなど、近年、地価上昇が顕著なエリアとなっています。
北海道ニセコや富良野と並び、良好な雪質が評価され、インバウンド需要が押し寄せているからです。
白馬といえば、40年前のテニスブームやペンションでにぎわったところです。今では古い別荘やペンションが外国人向けの高級ホテルやゲストハウスなど転換しています。「WAGYU」と看板に記載された高級レストランも数多く見かけます。ターゲットは明らかに外国人です。JR大糸線「白馬」駅前では老朽化した店舗・タクシー営業所を取壊し、中層の商業ビルが建築中です。駅前の土産物店店主に聞くと、「うちが入っているこのビルもいつ建て替えになるかわからない。いつまで商売できるか‥」と心配そうな返事です。インバウンドによる地価上昇や不動産取引の活発化は必ずしも地元住民のメリットばかりではなさそうです。
写真は昨年12月に開業した「ホテル ラビーニュ 白馬」。HPによると全38室のホテルコンドミニアムで、客室の窓からは北アルプスの眺望が楽しめそうです。このホテル近隣は他にもホテルなどの宿泊施設の建築工事中であり、客単価の高い訪日外国人の取り込みを狙う投資は今後もますます増えることでしょう。町を歩いていると明らかに長期滞在していると思われる白人系外国人も多く見受けられます。日本人が主役でないことに一抹の不安を感じます。

 

 

 

 

(AMS鑑定通信 2025年秋号から)

 

三田ガーデンヒルズ
先日、東京の高級マンション三田ガーデンヒルズを見に行きました(外観だけですが‥)。首都圏でマンション価格の高騰が報道されていますが、その代表格といえるのがこのマンションです。株式会社不動産経済研究所によれば、2023年の23区マンション平均価格は11,483万円で前年比39.4%の上昇でした。
これは同年に販売開始となった三田ガーデンヒルズの影響が大きいと分析されています。このマンションは、東京都港区三田1丁目の旧逓信省簡易保険局庁舎跡地(敷地面積約25,000㎡)に複数棟が建設され、総戸数1002戸から構成されます。
高級住宅地の代名詞でもある港区三田という立地、東京メトロ南北線・都営地下鉄大江戸線「麻布十番」駅などの徒歩圏内に位置し、至近に綱町三井倶楽部、在日イタリア大使館や在日オーストラリア大使館があり、都心としては閑静な環境であるため、富裕層から注目を集めました。平均単価は4億円、最高価格45億円と言われ、これが一挙に市場に出たため、23区平均単価を押し上げたことは間違いありません。
1987年に建てられた広尾ガーデンヒルズが今でもなお、富裕層に人気があり、資産価値が落ちていないことは有名です。久しぶりにガーデンヒルズを称するマンションが千戸近く市場に供給されたのは大きな出来事でした。
ホテルに見間違うほどの石造りの立派な正面エントランス上部には大きな時計が設置されており、豪華さを演出しています。単なる住まいという位置づけではなく、富の象徴として周囲に威圧感を与えています。

 

 

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